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空も飛べるはず
「暑い!」
広瀬はまるで夏を恨むかの様に、吠えた。
上を向いて歩けば、青い空が雲という助けを持たずに広がっていて、その空に押されるように太陽がさんさんと輝く。
駅から学校まで、およそ20分。
学校から駅までもおよそ20分。
「暑い……」
広瀬はせめて歩かずに駅まで行きたいと、無理な願いを神に向ける。
別段、進行する宗教があるわけではないがやはり人はなんだかんだで、神頼みが好きだ。
ただしかし、バレンタインやクリスマスの日を「俺、キリスト教じゃないから」と言い訳することはなかった。
高校に入ってからすぐに、おでこが広く、額がいつも輝いている子と交際することになったのだ。
理由は覚えていない。
ただ、なんとなくだ。
今は欲しい本を買いに学校の近くにある本屋に寄った帰りでこんな時は一人だ。
だから、まわりに人がいないのを見計らって独り言を言う。
遠くに見えた燕が羨ましかった。
俺も羽ばたければ、飛べるのに。
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