【始まりは王子様の帽子から】

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「――それでね、道の角で偶然ぶつかった人が超イケメソでー、その日に同じクラスに転校してくるの! で、当然席は隣でー、接近! みたいなー」   「あー! わかったよ! もう何十回も聞いたから、そのストーリー。他のは?」   空は真っ青な、ど快晴。   夏の太陽が容赦なくアスファルトを焦がす中、私大河内冴子(おおこうち さえこ)と村上大輔(むらかみ だいすけ)は、朝の通学路を並んで歩いていた。   いつものように妄想話にふける私に、呆れ顔の大輔は汗を浮かべた首筋を手で扇いでいる。   「だってこれが一番好きなんだもん! あっ、学園一のアイドルが私に惚れちゃうとか!?」   大輔の苦笑などお構いなしに、私はうきうきしてそう続ける。   「それも前に聞いたって……お、居るぞあそこに。学園一のアイドルが」   校門が見えて来た時、大輔がそこを指差して悪戯っぽく言った。   門の前には人だかりが出来ている。全員黄色い声を発している女子だ。おかげで囲まれている人が誰なのかは、簡単に予想できた。   「王海(おうみ)君だ!」   私は思わず声のトーンを上げ、両手を頬に添えた。なんだか大輔は、面白くないって顔してるけど。
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