【始まりは王子様の帽子から】

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王海怜(おうみ れい)。   頭脳明晰スポーツ万能、何をやらせてもソツがない。何よりあの美形な顔! おまけにお金持ちときたら、モテないわけがないよね。   「ああ、あの人こそまさに物語から抜け出して来た王子様よね! 今日も輝いてらっしゃる!」   頬にあった両手を組んで、今度はお祈りみたいなポーズをする私。   恋とかじゃない。ただ、目の保養になるのよ! あの切長でまつ毛ふっさふさの瞳、筋の通った高い鼻、白い肌。妄想の材料にもなるしね、えへ。   私なんて、一重でまつ毛短いし鼻も低いし。想像力以外は全部人並みで、一言で言うと……普通。   だけど王海君。真夏だっていうのに、そのニットの帽子を必ず被っているのはどうしてなの? 一度だって、取った所を見た事がない。   「確かに格好いいけどさー、王海って絶対深い仲の交友持たないらしいじゃん。親友とか、彼女とか」   そう話す大輔はぶすっとしている。何よ? 変な奴。   平凡な私に男っ気があるって言ったら、この大輔くらい。優しいけど、頼りにならないのよねー、何やってもどんくさくて。顔は、ほっぺのブツブツどうにかして欲しい。襟元まである黒髪も。
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