【始まりは王子様の帽子から】

4/10
前へ
/61ページ
次へ
「だから、あんな謎な奴よりさ! 俺と恋愛」   「そこがまたミステリアスでいいんじゃない! 大輔はわかってないなー」   大輔の妙に力のこもった声を遮り、肩をすくめてみせた。まだ何か言ってたかな? めっちゃ落ち込んでるんだけど……ま、いっか。   話している内に、校門の目の前まで来ていた。   女子の群れの中にちらっとしか見えないけど、王海君、白いシャツが眩しいわ! 大輔も着てるけど。相変わらず、表情は無表情だな。   こんな人と恋が出来たら……なんて、あたしにはあり得ないか。   いいの。私は日々大好きな妄想に明け暮れて、いつか素敵な王子様が現れるのを夢見てるだけで楽しいんだから。   関わる事も、ないだろう。   そんな事を思いながら、王海君(の周りの女子)の横を通り過ぎようとした、その時。   「やだー王海君!」   女子の一人がはしゃいで飛び退き、ちょうどその子の後ろに居た私は驚いて避けられなかった。   「わっ!」   ぶつかった衝撃でバランスを崩し、前のめりに倒れそうになる。   「冴子!」   ドサッ。   大輔の声とほぼ同時位に、私の体は何かに受け止められた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加