【始まりは王子様の帽子から】

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王海君の剣幕をやんわりと制止して。   私は不思議そうにしている彼に微笑んだ。   「あんなに言う事は厳しいのに、案外ちっちゃい事気にするんだなって」   「はあ?」   「王海君にとっては大きな悩みなんだろうけど。私は今でも王海君が格好よくしか見えないよ」   驚いた王海君に、私はさらに続ける。   「いつか王海君の中身や秘密を丸ごと知っても、『いいよ』って言ってくれる人が必ず現れるって!」   ざあっと。蒸し蒸しした空気を吹き飛ばすように、気持ちのいい風が吹き抜けた。   私、知ってるんだ。   さっき、王海君を押し倒しちゃった時。彼は倒れる時も、私が傷付かないようにかばってくれていた。   優しい人なんだって、思ったよ。   段のついたセミロングをなびかせ、真っ直ぐに王海君を見る。   王海君は、ぼーっと私を見つめ返していた。   ……なんか、王海君顔赤い?   「とっとにかく! 今の所、この事を知ってるのはお前だけだ。他言したりしたら、どうなるかわかってるな?」   急に視線をずらして、王海君は確かめるように言ってきた。その手をポキポキと鳴らしながら。   あ、あらゆる手段を使って苦しめられそう……。
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