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寝苦しい夜。
季節はまだ、夏とは言えなかったが
それでもその日は、この北国でも今年初めての真夏日だった、とニュースでやっていた。
ムッとくる暑さ。
汗ばんだ身体に、タオルケットが纏わり付く。
ふと涼しい風を感じて目が覚めると
彼女は、恐ろしい程嫌いなの、と言っていた眼鏡姿で
薄暗い明かりの中、本を読んでいた。
彼女が大好きだと言っていたその小説は、ボロボロになるまで読み込まれ、いつも彼女の枕元にあった。
僕が目覚めたのにも気付かずに、不細工な横顔で、ひたすら文字を追っている。
小説を読みながらも彼女の左手は、僕が寝苦しくない様にだろう、ひたすらに団扇を扇いでいる。
さわさわと心地好い風が、僕の髪を揺らす。
どれくらいの時間、彼女は起きているのだろう。
いつも睡魔に負けて先に眠ってしまう僕は、彼女がいつ眠っているのかわからない。
時折目覚めた時に、声をかけてくれたり、頭を撫でてくれる所を見ると、あまり夜は眠っていないのではないか、と思う。
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