その指で紡いで。

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「私、ちょっと病んでるの」 出会った頃に彼女が言った冗談が、あながち間違っていない事に僕は気付き始めていた。 朝、夜明けと共に眠り、僕の出勤に合わせて起きる。 そしてまた眠りについて、昼に起きる。 「何故、夜に眠らないの?」 一度だけ彼女に聞いた事がある。 彼女は、寂しそうに微笑んで 「だって…夜は、君がいてくれるから、寂しくないけれど、君が帰ってしまったら、私は一人じゃない。 一人の時間は、少しでも少ない方が良いでしょう?」 そう答えた。 そうか。 僕は妙に納得してしまい、それ以上何も聞く事が出来なかった。 「まぁ、こんな生活が出来るのも今だけだけれどね」 3ヶ月前に仕事を辞めた彼女は、そう笑う。 「仕事始めたら、寝てばかりよ」
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