その指で紡いで。

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彼女と出会うまで 僕はきっと、本当の恋愛をした事がなかった。 もちろん長く付き合った人もいたし、それなりに愛していたと思う。 寧ろ恋愛をするのも面倒で、都合良く会って、夜を過ごせる相手ばかりを選んでいた。 相手が本気になってしまったら、そこでおしまい。 「ごめんね。 もう会えないや。 良い相手見つけて、幸せになってね」 なんて酷い男だろう。 幸せになって―…なんて、今考えれば残酷な台詞だよな。 身体を重ねて、楽しむだけ楽しんで、相手が僕とわかり合いたいと願った途端に、他の男と幸せになれだなんて。 自分の偽善者ぶりに笑えるよ。 「じゃぁ、なんで抱いたの?」 「少しでも、気持ちがあったから、会ってたんでしょう?」 今考えれば、本当に自分の事しか考えてなかったんだと思う。 自分の良い所だけ見せて、偽りの自分を演じて、愛してないくせに、甘い言葉だけ囁いて。 恋愛の美味しい所だけを味わって。 愛しても、愛してもらえないのなら 始めから愛さない方が楽だったから。
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