第一章

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「大丈夫ですよ、気にしないでください」 茶髪は母の足を拭くと、浴場へと連れていった。 それからおむつをゴミ袋に入れ、床を雑巾で拭き再びモップを掛けた。 俊敏で適切な対処だった。 衛藤はばつが悪く、目を伏せたままだ。 作業を見守ることしかできない。 茶髪が作業を終えシーツを取替えはじめたとき、彼に対する評価は一転していた。 自分が惨めに思えた。 悔しさが滲む。 何もできない自分を見せつけられるようで、目を逸らしたくなった。
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