197人が本棚に入れています
本棚に追加
「ときどき会いに来てくれませんか」
茶髪はシーツを広げながらいった。
はあ、と衛藤は気のない返事をする。
「時間を見つけて来るようにはしますが」
「自分の母親なんだから、もっと気にかけてもいいと思うけど」
若者らしい率直な言葉に、むっと腹が立った。
お前に何がわかる。
教師だった母の姿が重なった。
茶髪に対する怒りと困惑は、失禁した母の姿へと変わる。それから遣る瀬無い思いとなり、胸のなかに消えていった。
こいつに云っても仕方ないのだ。
携帯がバイブした。
鍵に当たってチャリチャリ音を立てている。
衛藤は茶髪に背を向け、廊下に出る。
最初のコメントを投稿しよう!