第一章
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事務員の三枝からだった。 「ご出張のところ申し訳ありません」 そういったきり三枝は黙った。 云いにくそうな雰囲気が伝わってくる。 衛藤は用件を促す。 「おい、どうしたんだ?」 電話は同僚の吉田に代わった。 「まずいぞ、衛藤」 「何かあったのか」 「実力テストが盗まれた」 衛藤は糸が切れた操り人形のようになった。 だらりとぶらさがったまま動けない。 心臓が止まりかけていた。
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