第一章

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「金庫に保管してください」 提案したのは衛藤だった。 過剰反応だと笑われた。 念には念をといい、反対を押し切った。 生徒による盗難を懸念したのではない。 追い込まれた生徒は何をするかわからない、そう噂されるのを恐れた。 衛藤の頭のなかは、六月に起こった不祥事で占められていた。 しかし皮肉にも、衛藤はテストを失ってしまった。 一枚の盗難を防ごうとして全ての解答用紙が盗まれたのだ。 「どうすんだよ」 吉田の声は興奮していた。 頭に錐を刺したような痛みが走る。 お前のせいだぞ。 そう云われた気がした。 携帯を叩きつけ、壁を蹴りたくなった。 やられた、最悪だ!
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