第一章

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モノトーンの映画が頭に浮かんだ。 獄舎のむこうからナチス憲兵が歩いてくるような錯覚を覚える。 靴音に恐怖を響かせやってくるのだ。 ──檻だ。 衛藤は訪問票を書きながらそう思った。 衛藤隼人。 桐陽学園高等学校特別主任。 教師。 二十八歳。 学校経営に関する少子化対策委員として、対外的な活動を実質担っている。 今日は教育問題に関するシンポジウムがあり、出張だった。シンポジウムの後、母の様子をみようと養老施設に足を運んだ。
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