第一章

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衛藤はホールを通り過ぎた。 エレベーターは使わず、階段を使って三階まで上る。 三階の廊下にでると、トイレから老人が顔を覗かせていた。 こっちを凝視している。 老人の澱んだ目をみて、嫌悪感を覚えた。 まるで収容所じゃないか。 廊下の奥から、若いヘルパーがやってくる。 茶髪。 長身で痩せ型。 髪の毛を後ろで束ねヘッドホンをしている。 ヘルパーは菓子パンを片手に音楽にあわせ肩を弾ませていた。 どこか陽気だ。 牢屋に迷いこんだ季節外れの蝶を思い起こさせる。 衛藤はヘルパーを避けるように視線を切った。 ナンバープレートを確認し、ドアをノックする。
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