197人が本棚に入れています
本棚に追加
衛藤はベッドにあったカーディガンを手にとると、母の肩にかけた。
死んだ鳥を埋めることもできずに、ただ立ち尽くす少年が自分なのだ。
ふと、そう思った。
そっと重ねた母の手がかさかさに乾いている。
小刻みに肩を揺らす母をみて衛藤は笑顔をむけた。
母の視線はドアへ注がれている。
「あれえ」
陽気な声が響く。
茶髪のヘルパーがシーツを抱えてやってきた。
「るみ子さん良かったね、息子さん来てくれたんだ」
そういうと茶髪は肩を弾ませ、シーツ交換を始めた。
ヘルパーは衛藤に会釈すると、顔にかかる髪の毛を掬いあげた。
その仕草が深夜のコンビニ店員のようにみえた。
スピードは速いが仕事が軽い。
最初のコメントを投稿しよう!