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「私は片原紫苑。45歳。2年と少し前に息子の片原凌が行方不明になった。
……あなたは、誰なの?」
凌の母、紫苑はゼロに尋ねた。なぜ自分の自己紹介に息子の……それもいなくなった息子のことを言う必要があるのか。
「私は、秩序の館・サクリストルフィア学校のツインソード科アゲハ、17歳」
彼女は言った。周りの3人はハラハラしながら見守っている。
「率直に聞くわ。あなたは私を見て、『凌』と言ったわね。あれはどういう意味?」
ゼロは言った。紫苑は頬に手を当てる。彼女は紫苑のその癖に見覚えがある気がした。
「なんとなく…なんとなく、そう思ったの。でも、まず性別が違うわね」
紫苑は微笑んだ。期待が外れた苦笑いだった。
ゼロは人の感情の凄さを信じていた。
目には見えない罠があっても、第6感で避ける。このような行動も極度に緊張した感情が起こす奇跡だ。
それと同じように、心には現実的には有り得ないことを見破ったりする力がある。
友情、愛情、執念。
どれも、限界を超えた力を出す源である。ゼロも津村光彦という男の執念でここまで辿り着いたに違いない。
だから…。
「あなたが私を片原凌と言うのなら、それは正しいのでしょうね」
ゼロは静かに言った。
「私…いや、俺は片原凌だ。…“元”だけどな」
時が止まったようだった。時計だけが、今、彼らがいる空間が現実のものであると教えてくれていた。
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