1.異世界

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私は自然と『何か』の正体を求めるように、家とは逆方向に一心不乱に走った。 何かが私を呼んでいる。 その何かが私を求めている。 ――どれくらい歩いただろうか。どうやら見える視界も気にならず、ひたすら歩き続けたようだ。 気付けば、私の目の前には遥か遠くの空に届きそうなくらいの大きくて、太い老いた杉の木があった。 そうか、これは夢だ。 きっとそうだ。 私は溜息一つして、 杉の木に近付こうとした瞬間。 杉の木に向かって私を押すように、大きな風が吹いた。 私は振り返ろうとしたが、それを風が拒むかのように自分の体が一切動かない。 自然の力には敵わず、声も出せず抵抗も出来ずに目の前が真っ白になった。 ついには、体のバランスを崩して立ってはいられなくなったのだ。 ふわりとした柔らかい感覚に襲われたが、今度は暗闇の中へ放りだされた感覚に陥った。 記憶はここまで。 気を失った後のことは覚えていなかった。 「ん……」 目を覚ますと、暗い空が視界一杯に広がっていた。 猛禽の大群が声をあげてその空を激しく飛んでいるのが見える。 私は痛い頭を抑えながら、ゆっくりと起き上がった。 酷く疲れた。体がだるいし、所々ズキズキとする。
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