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いったい自分の身に何が起こったのか。
傍に先ほどの杉の木があったことが、私を唯一安心させるモノであった。
とりあえず、家に帰らなければ。
母さんたちが心配する。
私は立ち上がって、帰り道だと信じる方向に歩いていこうと思った。
その束の間、
「何……よ、ここ」
私は立ち止まり、驚きのあまりに声に思いを出してしまった。
ここは、私が住んでいる村ではない。
知らない道。
知らない植物。
知らない暗闇。
それを察した私の心臓が異常なほど早く動く。
それと同時に冷や汗も出てきた。
これは絶対に夢だ。覚めろ向日葵。
そう自分に言い聞かせることしか出来なかった。
今傍に信じるものはない。
途方に暮れていた私にさらい追い討ちをかけるように、声が聞こえた。
しかも生きているような声ではない。
人間ではないような声。
『汝、力、欲シイカ』
極限状態に追い込まれた心に冷静という文字は無い。
「誰!?」
私は声を荒げて焦りながら、辺りを見回した。
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