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「帰りたい」
暗い森の中で一人歩きながらつぶやく私。
さっき、痛い思いをしたので、頬をつねる意味もない。
夢ではないことが分かったから。
もうあれから、あの痛みを感じることは無くなったので、
あんなところで蹲るよりも、この森の抜け道でも探すほうがいいだろう。
そう思い疲れきった足で、歩きまわっていた。
本当にここは暗い。
蒼然とした森ではない。
もう、暗黒と言ったほうが正しい。
狼……、いや、魔物が出そうな雰囲気だった。
出たりしてね。
昔、本で読んだ魔王の手下とか。
幾らなんでも、それはありえない……かな。
そう思った刹那。
私の視界がグラリと変わった。
暗黒の森から、暗澹とした空へと。
そして、ひやりとした冷たくて硬いものが左頬を掠って重たくも地面に刺さる音がした。
「アンタ、何者だ?」
黒い空をバックとして人が視界に入っていた。
顔は暗くてよく見えないが、とりあえず私に馬乗りしているのは、人だということは認識できた。
「誰だと聞いている」
相手の声が重みを増したのが分かる。
「あ、貴方こそ誰よ」
すると、私の左頬その人の傍にあった冷たいものを地面から引っこ抜いたのが、かすかに見えた。
「誰だ 答えなければ殺す 場合によっても殺す」
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