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「神谷さん♪」
「…なんだよ…」
小野くんはいつも笑顔で僕に話し掛けてくれる
俺にはもったいない笑顔で…
「今日、仕事終わったら遊びに行きませんか?」
「ん~……どこに?」
「服見たり……」
「……いいよ。今日はこれで仕事終わりだし」
「やった!!絶対ですよ?絶対っ!」
子供のようにはしゃぐ小野くんはそういいながら会議室にはいっていった
「元気いいな……」
俺も小野くんに続くように会議室に入ると、みんな揃っていって
俺がくるのを待ち構えていたように打ち合わせが始まった
―
収録が終わると小野くんは俺のほうへ近寄り
『下で待ってます』
そう告げ、スタジオを先に出た。
「ったく………」
この時はわからなかったよ…
小野くんのこと
あんなに好きだったなんて
下に行くと小野くんは俺の知らない女性と二人で話していた
「……誰だろ」
その女性と話す小野くんはいつも俺に笑顔だった
……ううん
それよりも眩しい
俺の胸は
『見たくない』
そんな気持ちでいっぱいになった
「あ、神谷さんっ!!!」
小野くんは俺を見つけるとその女性に別れを告げ俺のほうへ向かってきた
「っ……ご、ごめん小野くん」
「どうしたんですか?」
「きょ、今日……まだ用事あったんだ…」
「え……じゃあ仕方ないですよね」
「……じゃあね小野くん」
「あ、さようなら……」
ズキッ―
『さようなら』
小野くんが言ったその一言が心の奥底に刺さった…
もう会わない。
そう聞こえてしまって
「なに傷ついてるんだろう……俺」
小野くんの右手に差し出そうとしていた俺の左手は行き場をなくしたまま
ズボンの左ぽっけに押し込んだ
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