438人が本棚に入れています
本棚に追加
「いない……」
とにかく走った
いつも小野くんが行く服屋、本屋、お店……
でもどこにもいない
どこにいるの……小野くん……
「お………くん……っ」
はぁ……はぁ……
もう届かないのかな
俺の声なんて
「か、神谷さん……?」
「………っ!!!!」
声のするほうを見上げると目の前には小野くんが立っていた
無意識のうちの行動だったのかもしれない
小野くんの顔を見て俺の心は安心して、飛びつくように抱き着いた
「か、神谷さん!?」
「………見つけた」
「あ、あの……どうしたんですか」
「ごめんね……ごめんね」
俺はひどいことをした
謝らなきゃ……
たくさん。声にできるだけ謝るんだ……
「…………辛かったんですか?なにか嫌なこと……あったんですか?」
「嘘ついた……」
「嘘……?」
「小野くんが女の人と話してて……見てるのが辛くて逃げたんだ。用事あるなんて嘘ついて……」
「………謝らないでください。嬉しいですよ」
どうしてそうやってまた笑顔を見せるの?
「知ってましたか?神谷さんはきっと僕のこと好きなんですよ♪」
「……好き……?」
「ヤキモチって言うんですよ。神谷さんが感じた気持ちは」
「………」
「それとあの女性はスタッフさんですよ。僕がエレベーターで落としたものを渡しにきてくれたんです」
なにかを思い付いたかのように不気味な笑顔を小野くんは顔に浮かべた
……この笑顔も俺だけのものにしていいのかな
ね、小野くん?
最初のコメントを投稿しよう!