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見た目何も考えていないように見えて、清明は馬鹿ではないらしい。
どうやら、麗は試されたようだった。
彼の荷物はいわば小さな罠、帰ってきて荷物共々麗が消えていればそれは結局麗が信用のならないやつだったということだ。
「食えないやつだな」
互いに完全に警戒を解いたわけではない。
だが、だからこそ何処か互いを信じていい気がする。
そういう意味を込めて清明は荷物(罠)お置いて行ったことを匂わせたのだろう。
麗は少し口の端を上げて、不適な笑みを浮かべると火を熾す為にまわるの枝を拾い始めた。
一方、清明はというと…
「俺ってついてるな~!」
川はみつからなかったが、木の根とによってできた自然のため池を発見したのだ。
ふと、一昨日の夜、大雨が降ったこと思い出す。
その時は雨宿りをする場所にてこずり散々な目にあったのだが…
「まぁ、結果良しとしよう」
清明は持っていた水入れに水を入れると、一口水を救って喉を潤す。
「さてと…ついでに食料も探してくるかな」
水のおかげで少し気分の良くなった清明は勢いよく立ち上がると、来た道を寄り道しながら戻っていっ
た。
それから1、2時間ほどして清明が戻ると、そこには赤々と燃える火があった。
「お!良い感じに燃えてるじゃねーか」
どっかりと火の前に座り込んで、取ってきた果物を清明は横に置く。
「…水はあったのか?」
「おう! ついてるぜ。見つけられるとは思ってなかったからな」
「そういうものか?」
「そういうものかって…お前ね~。ここまでどうやって来たわけ? まさか付き人と一緒に馬車でとか言わないだろうな?」
『貴族』ということを匂わせると、また麗の癇に障ったのか顔が歪んだ。
「俺は貴族ではないと言ったはずだ!」
普通の人なら、顔を強張らせそうな鋭い目つきだったが、清明は気にした様子はなく軽く流す。
「へいへい、っで一体今までどうやって水を調達してたんだよ?」
すぐに顔は平静な表情に戻ったが、心なし不機嫌がにじみ出た声で麗は答える。
「川や池だ」
「そんな、いつも都合よく川や池なんか」
「あったのだから仕方ないだろう?」
その答えに、清明はぽかんと口をあける。
「はぁ?じゃあココに来るまで水には困ってねぇってか?」
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