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一つ息を吐き出し、気持ちを落ち着けてから、一歩一歩踏みしめるように、獣の領域へと入っていく。
面白くないほどに、中は想像通りだった。
奥に進むほど暗くなり、視界が悪く、心なし空気が淀んでいるように感じる。
中に入って一時間と歩いていないにも関わらず、清明は二匹の毒蛇と他は何かよくわからない毒虫に三匹遭遇した。
森や山や川といった自然の中で育った清明は毒を持つ生き物や猛獣の類に詳しかったが、それでも知ら
い生き物がこの山にはウヨウヨしているらしい。
野生動物によって形成された完全な弱肉強食の世界、そこに足を踏み入れた人間も当然例外ではなく、必然的に生存競争の一員として組み込まれるのだ。
「あーうざい! わかっては居たけどなかなか進めないじゃねーか!」
文句を言いながら方位磁石を取出し、清明は自分の歩いている方向が間違っていないかを確認した。
手足は枝や草に引っ掻かれて傷だらけだ。
一応、休めそうな場所を見つけたら薬草で手当てをするつもりでいるが、この山にそんなところがあるか怪しいものだった。
それから2時間程、歩き続けて、何匹もの小物(毒虫や好戦的な爬虫類等)を蹴散らしてきたが、期待していたような獣には未だに出くわしていない。
急いでいるので、何匹もの獣の相手をするのはごめん蒙るが、せっかくなのでココの獣相手に腕試しの一つもしたいと考えていたのだが・・・
少々苛立ちながらそんなことを考えていた清明だったが、微かな生き物の気配を感じでピタリと足を止める。
『また小物か?・・・いや・・・・・』
どうやら、今度は蛇や虫ではないらしい。
その気配と微かな足音が近づいてくる物の大きさを物語っていた。
虎のような大きな獣ではなさそうだが、確実に今までの雑魚よりはでかい。
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