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そう判断した清明は気配の方へ、静かに近づいていく。
すると、向こうも警戒したのか足音の感じがかわる、そこには微かな殺気も混じっていた。
『どうやら、図体ばかりのバカな獣じゃねぇーみたいだな』
互いに互いの気配を警戒しつつ、攻撃に転じる距離を探る。
そして、真っ暗な中に影が見えた瞬間、二つの生き物は勢いよく地を蹴る。
清明は踏み出したと同時に、腰に下げていた刃物を引き抜いていた。
―カキン―
金属音が木々の中に響く。
『は?金属音?』
一撃がぶつかった音により、清明は少々動揺した。
この音は、獣の牙と剣がぶつかった時の音とは明らかに違う。
どう考えても剣同士がぶつかった音。
どうやら、向こうも同様したらしく、互いに素早く剣を引くと、相手を見ようと剣を構えたまま前を見る
。
「え?」
「あ・・・」
そこには明らかに自分の同属である『人間』が立っていた。
あまりの驚きにしばし無言で放心状態の二人だったが、先に我に返った清明が口を開いたその時。
木で視覚になった場所から獣が一匹、勢い良く飛び出してきた。
「?!」
完全に油断していた清明の肩を獣の爪が掠める。
持ち前の反射神経の良さで何とか避け、掠り傷ではあったが、動揺のしていたせいかバランスを崩して膝を下についてしまった。
「しまった」
小さく呟いた時には膝を地に打ち付けた痛みが体をかけぬけていた。
痛みを堪えて剣を構えようとしたが、獣が再び清明を狙っていた。
思った以上に早い。
『やられる!』
そう思ったと同時に獣がグォォっと唸って、後ろへ引く。
どうやら先程の『人間』が獣を切りつけたらしい。と清明が認識した時にはもう全て終わった後であった。
突然のことに、呆然としていた清明の目にも鮮やかな剣裁きが焼き付いている。
目の前のその人は明らかに強かった。
正式な剣の指導を受けたことのない清明でさえその人物がてだれであることがわかる。
その剣裁きは洗練され、美しく、そして力強い。
目の前で息たえている獣をしばし見つめた後、清明は視線を謎の人物へと向ける。
その人は無表情で静かにそこに立っていた。
「あんた…強いな」
少し警戒気味に声をかけてみたが、返答はない。
木々に作られた暗さで、はっきりした表情はわからなかった。
応えが無さそうだと判断し、さらに清明は声をかける。
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