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「あんた…ココで何してるんだ?」
少し間を置いた後、その人物は口を動かした。
「お前こそ、こんな所で何をしている?」
初めてまともに聞いたその声は中性的なハスキーな声だった。
質問を質問で返され、あまり気分が良くはなかったが、互いに警戒しているのは承知の上。
清明はここは自分から踏み込むべきだと判断し、正直に答えた。
「俺は華燐に行く途中だ。それで、あんたは?」
少々間を置いたあと、今度こそ答えが返ってくる。
「…旅の…途中だ。華燐を目指している」
目的地はどうやら、同じらしい。
それにしたって、こんな道を選んでくるバカが自分以外にいるとは思わなかった清明は少々驚いていた。
しばし、また訪れる沈黙。
この沈黙を利用して、清明は今の状況と目の前の人物について考える。
腕は確かな相手。
当然会ったばかりの人物を信用する気はないが、利害が一致すれば一時的な協力関係にはなれる。
「なぁ、あんた俺と組む気はないか?」
相手はうんともすんとも言わなかったが、その提案に驚いたのか影が僅かに揺れる。
清明はさらに続けた。
「この先、華燐までは4、5日…下手したらもっとかかるぜ。なら、ここで手を組んで夜に交代で見張りをする方が幾分体への負担が楽だと思う…会ったばかりの人物を信用できないという条件は互いに同じだ」
清明の言葉を黙って聞いていた相手は、少し考えた後、僅かに頷いたように見えた。
「…いいだろう。ただし、変な行動を取ろうものなら…私は容赦はしない」
静かだけれど、確かな威圧感。
その言葉は本気だ。
清明は一瞬ざわっと全身に鳥肌がたつ。
しかし、勝ち気な笑みを作ると、先程より少し警戒をといた口調で声をあげた。
「それはお互い様だ」
提案をしたからには、先に持っている剣をおさめるのは礼儀だ。
清明は剣を鞘におさめると、立ち上がって相手に一歩近づく。
相手も剣をおさめて清明の方へと近づいてきた。
手を差し出して、協定の印の握手を求めると、躊躇いがちに相手の手ものばされる。
「俺は廣清明だ。清明って呼んでくれ」
「李麗(りれい)…麗でいい」
その時、清明は初めて相手の顔をまともに見た。
その人物は異様に整った顔をしていた。
サラサラの金の髪を後ろでたばね。
瞳は深い青、肌は雪のように白く、すらっと伸びた手足。
身長はかなり高かった。
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