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中性的な顔をしていたが、もしかしたら…
『男だろうか?』
男というのはこの国では珍しい。
何故か、ここ百年ほどの間に男子の数は減り続け、男は貴重な存在となっていた。
そのため、男はどこに行っても優遇され、男の赤子を売ろうものなら数年は遊んで暮らせる値段がつくだろう。
清明には弟がおり、何度も領主に譲ってくれと言われ続けた。
ことごとく断り続けたため、散々嫌がらせを受けてきたのだ。
『だから…俺は弟を守るために…華燐に…』
少し物思いに耽りすぎたようだ。
いっこうに手をはなさない清明を見て、怪訝な表情の麗。
「えっあっ、悪ぃ! ちょっと考え事を…」
清明は慌てて手を放すと、少し照れたように顔を赤らめた。
清明の反応をまだ不思議に感じているらしく、麗は清明を見たままだ。
「そうだ! あの…何だその…さっきは有難うな! 助かった」
清明はくるりと背を向けて、先程助けられた事への礼を言う。
「さっき?」
麗はどうやら何かをしてやったという自覚がないらしい。
「俺、しくじって…油断してたから…さ。あんた…いや、麗がこいつを切ってなきゃ俺は大怪我してたよ」
清明は油断していた事が悔しかったのか、少々躊躇いつつも事実をのべる。
清明は、血塗れで息たえた獣の首の皮をつかむと、方位磁石を確認してから、それを引きずってズンズン奥へと進んでいった。
清明の不可解な行動に麗は顔を顰める。
「どうする気だ?」
「木に吊してくる」
答えを聞いたものの、麗はさっぱりわからなかった。
しかし、それ以上質問してはこなかったので、清明は黙って進んだ。
大きな荷物を引きずりながら、なんとか木々をかきわけ、しばらく歩く。
「この辺で良いか…」と呟いて、まわりを見回し後、大きな木の根元に荷物(獣)を下ろした。
鞄からナイフを取り出し、獣の喉を切り裂く。
「?! うっ」
麗は驚いて喉に何かを詰めたような声で唸る。
「ほんとに何をしているんだ?」
「ここまで見てわかんねーのかよ?そういや…」
清明は作業の手を止めて麗を見た。
「あんた良い服着てるな?」
問われたことの意味がわからないのか、麗はただ黙っているだけだ。
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