act.Ⅴ 夏の嵐 祭のあと

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  特設ステージの関係者以外立ち入り禁止の看板を無視して、アタシたちはロープをくぐり裏を通って楠木へ向かった。 途中、顔見知りの祭運営に携わっている近所のおじさん連中に挨拶と笑顔を振りまき、関係者以外立ち入り禁止エリアを難なく通過する。 そしてようやくたどり着いた楠木の下に、これからスタンバイが掛かりそうな吹奏楽部の一団と、そこに渋い色の浴衣を着て、一団とは違和感アリアリの二人が紛れて談笑しているのを見つけた。 アタシたちが近寄っていくと、それに気づいたカズヤが手を上げた。 横に居たトキヒトも両手を振り上げ、こちらに存在を主張していた。 昨日の出来事が頭をよぎったが、一度許すと決めたのだから根に持っているのも感じが悪い。 何事もなかったかのように振る舞った方が良いように思えた。   「もう先に居たねー」 最初に見つけたリンゴ飴の屋台で、青リンゴの飴を買ったアキコが片手に持ったそれを高くあげて振り回すと、刺してあったリンゴがスポッと何処かへ飛んでいき、手には串しか残されていなかった。 その一部始終を見ていた全員が爆笑する。 笑われたアキコはしかめっ面をしてトキヒトに走っていき、草履で蹴りを入れていた。 「お前のせいだー」 と騒いでいる二人を横目に、カズヤがアタシの顔をのぞきこんだ。  
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