act.Ⅶ 君について考えている

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━━━━…… 「アゲちゃん、ゴメンね。あっこ、トーコを説得したけど、ダメだったの」 亜希子さんから差し出された花束を受け取り、メッセージカードを抜き取って係員に渡す。 「ありがとう」 メッセージカードには印刷されたありきたりな言葉と、手書きで三人の名が連名されていた。 僕はそれを大切に胸ポケットにしまって、精一杯の笑顔を振りまいた。 「今日は来てくれてありがとう。短い時間だけれど、楽しんでくれると嬉しい」 「オレ、リサイタルなんて初めてだ」 興奮気味の時人は、和也にたしなめられるまで控え室を点検したり、慌ただしくスタッフが行き交う廊下を覗き込んでいた。  
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