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途中、トキヒトがアタシに気まずそうに話しかけてきた。
「すまんかった、トーコ。その浴衣似合ってるし、それで勘弁してくれ!」
両手を合わせてアタシを拝むトキヒトに、思わず笑ってしまった。
その反応を見たトキヒトはアタシがもうそんなに怒っていないと判断したらしく、ニカッと笑って横に居たカズヤに肩を組んで喜びを表していた。
単純なヤツだ。
肩を組んで歩く二人にアキコも加わり、アタシは後ろからその光景を眺める。
こんな日がずっと続けばいい。
センチメンタルな気分に浸っていると、トキヒトが突然立ち止まり、すぐ後ろを歩いていたアタシは、つんのめるようにトキヒトの背中に手をついた。
「ちょっと、危ないじゃないの」
「トーコ、サプライズゲストだ」
トキヒトの背後から恐る恐る顔を出すと、アタシたちが座るはずの観覧席には、深い夜の色を纏い、上品に浴衣を着こなしたアゲハが、こちらを向いて立ち上がった。
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