121人が本棚に入れています
本棚に追加
「逃げてはならぬ、兵士よ」
老人は命じた…
「礼拝堂に戻るのじゃ。あんたの身にも何も悪いことは起こりゃせん…
ただし、服を脱ぎ銃剣を銃につけ、それを腰掛けに突き立てなさい。
そして、それに軍帽と外服を被せ、自分は大祭壇の陰に身をひそめて、何が起ころうと…
じっと、しているのじゃ」
古参兵は勇を鼓して小礼拝堂に戻り、老人の助言どおりにした。
…真夜中になると、恐るべき轟音と共に柩の蓋が開いたかと思うと、黒い王女が小礼拝堂の真ん中にとび出してきた。
そして外服にくるんだ銃を見て叫んだ
「あ゙ーあ゙ーあ゙ー!!今日もまた若い兵士よな!」
王女は銃を掴んでそれに喰らいつき、たちまち鋼を咬み砕いてしまった…
だが、それが人間でないことが分かると、王女は恐ろしげな声で喚き始めた。
「父上は、この私を生きながら葬られたうえに何も食べ物を与えてくださらなかった。
でも、今夜の兵隊は、ここの何処に隠れているんだわ!」
王女は大聖堂の中を駆けずり回りはじめたが、誰の姿も見つからなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!