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しかし、幼い鬼灯にはその重さはあまりにも大きかった。
壊れそうなほど、精神が追い詰められた鬼灯を救うべく、繊月は動く。
とことこと、若干酸漿よりまだ高い身体を進めて鬼灯の前に立つ。
「蓮ちゃん、私ちょっと用事があるから一居なくなるけど、凛と一緒にいてくれる?」
なんの支えも今はもっていない鬼灯に対して酷だと繊月は思いながらも、今やらねばならぬことを考えて先に動く。
そのためには、鬼灯に我慢してもらうしかないのだ。すべては鬼灯のためと思いながら。
「ん・・・、行ってらっしゃい」
蚊の鳴くような声で繊月に言う。
それを聞きとると繊月は、ごめん、と一言残して足早に病院を後にする。
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ごめん、一言だけでよかっただろうか、そういった自責の念が繊月の頭の中を駆け巡る。
おいていったことを悔やんでいるより、頭は次に動かなければならないことをすぐさま頭ははじき出す。
ガラスでできた自動扉をくぐり外へ出る。
いまだ外は太陽が昇ることすらなく、黒々としている。
空に浮かぶ月はそんなことを気にしないように、嘲笑うかのように光を反射して地を照らす。今宵は文月だ。
「目指すは櫻華か・・・、嫌な風になってきたのさ~」
繊月が虚空に向かって呟く。
ひと気がないことを確認して、起動。
淡く足元が紅に光ったかと思うと、次の瞬間には発光。
繊月のいた場所には、紅の燐光煌めくだけだった。
繊月は、チカラを使う。
酸漿が呼ぶには"魔術"と適当に呼称しているが確かにその通りである。
そのチカラ、魔術を使って飛ぶのは、櫻華と繊月が呼んだ地。
その場所へ飛んだのだ。
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