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紅い燐光を煌めかせて到着するのはひとつのかなり大きい建造物。
見渡す限りはその建造物より高い建物はなく、同じ高さぐらいの建物はいくつか見える。
すべてコンクリートなどで作られた、学校の校舎が建っている場所。
そのうちの一番高い建物の屋上に辿り着いた。
繊月は今自分が立っている位置の向かい側、ひとつ深夜にもかかわらず明かりが灯っている部屋、ご丁寧に窓まで開けている。
「まったく・・・・・・」
草履でコンクリートを蹴る。
繊月はフェンスを越え、落下する。
重力に引かれる繊月。
しかし、空中で身を捻り、重心をずらし、壁を蹴る。
コンクリートの壁が軋む音を闇夜に響かせ、さらに蹴る。
空中で重力を振り切る勢いで平行に吹っ飛ぶ繊月、目指すは丁寧に窓まで開けられた部屋。
たいした距離もないため、加速を付け過ぎたため、ガラス窓を砕き割る勢いで侵入する。
激しい破砕音とともに侵入した繊月。
目当ての人物は一連の動きを眺めながらコーヒーを啜っていた。
繊月は大して確認もせず、突っ込んだ時の衝撃を殺すより早くその人物に向かって突っ込んだ際に欠けたコンクリートの破片などをフルスイングで投げる。
一連の動作は軽く人を殺せる、必殺の威力を秘めているのだが、それを人に向ける繊月の持つ感情は分からない。
だが、いつも楽しそうに笑顔を浮かべていた繊月の表情はいまは、無。
なにも映してはいない。
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