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半径が5メートルほど広がった瞬間。
八重になった波の円、一つ一つの円の間を埋めるように、何かの文字らしきものが広がっていく。
何の文字か、象形文字かは分からないが、形作られていくソレを第三者が見た瞬間、こういうであろう。"魔法陣"と、
そうとしか取れない奇怪な絵。
しかし、混乱しているようすの少女は円陣の中で首をまわして見る。
体は何かで縛られているのか動かない。
しかし、首から上は動くのか、今の状況を把握しようと周囲を見る。
そんな少女の行動を嘲笑うように、円陣は細部を描いていく。
少女の涙から始まった円陣は、ものの二十秒ほどで精巧な5メートルほどある円陣が完成する、
円陣の完成、次は赤く紅く、円陣の精巧な文字や図形に力を流すようにして激しく光る。
しかしその光には優しい感触が流れる、中心にいる少女を撫でるようにして。
激しく優しい本来なら相成れないモノがそこには存在した。
土倉の小窓からは例外なく紅い光が漏れだしている、しかしその光に気がつく者はいない。
夜の帳はそこまで深いのだ。
土倉の中では、円陣に十分な光が灯った。
二度三度、試運転するかのように強く光ったかと思うと、四度目は先程の脈動を彷彿とさせる発光とは違い、円陣全体が焼き切れるほどまで強く紅い色を放出する。
中心にいる少女は激しい光の前に目を瞑ってしまう。
目を瞑っても、暴力的なまでに強い紅い光は瞑ることでは和らげる程度の力までしかなかった。
その、強大な発光現象は数秒で終わった。
円陣の中心にいる少女にはその発光が永遠とも感じられたのであろうか、泣いていた時よりも疲れて見える。
ゆっくりと消えていく紅い光。
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