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数秒だけ紅の静寂が土倉の中を包み込み、それが収まるころには先程と何も変わってない二人がそのまま現れた。
「契約終了っと、全行程全て問題なし、んじゃ、これからずーっとよろしくなのさ~」
最後の紅い光が契約、というモノを肯定する動作だったのか、鬼灯には推測することしかできないが、多分そうであろう。
「契約って?」
全ての情報を持っている繊月に聞くのが一番である。
「ん~、なんていうか、私がここにとどまるのに必要なことなのさ~」
当の本人にも詳しいことは分かっていない。
それに対して、若干のあきれを思いながら笑う。
「ふーん」
「まぁ、なんにせよ、これからよろしくね~?」
溢れんばかりの笑顔で繊月は酸漿に言い、手を伸ばす。
ぐー
ぱー
ぐー
ぱー
にぎにぎ、と差し出した手を動かして待つ。
握手を求めているのを鬼灯は理解すると、やっと繊月の手をつかんで握手をする。
そして、へたれこんでいた鬼灯を握手したままの手で起こし、目の前に立たせる。
「ん、これからよろしく」
この時から、二人の付き合いは始まる。
翌朝になって、土倉から出してもらった時の周りの反応はごくごく自然。
どこか取り繕っているわけでもなく、繊月が見えてないわけでもない。
もともとそこに存在していた、というのが事実となって刷り込まれている、そう繊月は酸漿に説明してくれた、ウィンク付きで。
そうやって、不可思議な現象が続きながら、喧嘩もしながら仲良く生活していた、だが、ある契機。
そこから鬼灯の運命はねじ曲がった。
小学校高学年。
繊月も姿は変化しないまま、一緒に途中から入学したころ。
その事件は起こった。
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