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類の質問に素直に答えたはずなのに、あたしはまだ…その手から解放されていなかった。
眼鏡の奥に潜む茶色の瞳が、あたしを捕らえて離さない。
学校の中でこんな甘い雰囲気になったのは、告白されたあの日以来だ。
類の綺麗な顔が少しずつ近付いてくる。
このままキスされるのか?
心の準備も出来ないまま、あたしはギュッと目を閉じる。
しかし、いつまで経っても唇には何の変化も起こらなかった。
あれ?
肩透かしを喰らった気分になりながら、目を開こうとしたその時だった。
チュッ…
それはあたしの額を軽く掠めていく。
ほんの一瞬だけど、額に触れたのは紛れも無く柔らかな唇の感触だった。
ゆっくり目を開けてみると、顔全体をガッチリと固定してた手から無事解放された。
目の前には満足そうに微笑む類の顔。
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