第1話 『準備期間~開会式』

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類の質問に素直に答えたはずなのに、あたしはまだ…その手から解放されていなかった。 眼鏡の奥に潜む茶色の瞳が、あたしを捕らえて離さない。 学校の中でこんな甘い雰囲気になったのは、告白されたあの日以来だ。 類の綺麗な顔が少しずつ近付いてくる。 このままキスされるのか? 心の準備も出来ないまま、あたしはギュッと目を閉じる。 しかし、いつまで経っても唇には何の変化も起こらなかった。 あれ? 肩透かしを喰らった気分になりながら、目を開こうとしたその時だった。 チュッ… それはあたしの額を軽く掠めていく。 ほんの一瞬だけど、額に触れたのは紛れも無く柔らかな唇の感触だった。 ゆっくり目を開けてみると、顔全体をガッチリと固定してた手から無事解放された。 目の前には満足そうに微笑む類の顔。 .
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