綿菓子:花火:初恋

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少しして、暗闇の中に一粒の光が灯る。 その光は、特有の音と共に夜空へと発って----一瞬、星の中に溶け込む。 そして。 弾ける。 色鮮やかな光を、空一面に散らして。 「…………」 彼も、私も、黙ってそれを見ていた。 一心に、見つめた。 私は袋の中に手を伸ばし、ふわふわの綿菓子をつまんで、口に放る。 さっと溶けてしまったそれは、甘く、優しく、そして切ない味がした。 どこかで味わったような----でも私は初めて口にしたような----そんな不思議な味。 例えるなら--------、 ----初恋、なのかな。 ふと、そんなことを、思った。 <<end>>
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