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どれほど時がたったのだろう。
未だ清盛はその唇を固く閉じたまま、常磐を見据えている。
やはりそんなワガママは許されないのかと絶望が常磐を襲う。
堪えていた涙が一粒こぼれた。
「母様、泣いたら父様に怒られますよ。
武士の妻が泣いてはいけません」
今若が揺れる瞳を向け、しっかりとした口調で母である常磐を宥める。
まだこんなに幼いというのに、いつの間にこんなに頼もしくなったのだろう。
自分だって怖さで押し潰されそうなはずなのに。
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