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一、二歩足を進めると、どこからともなく現れた男が奥の広間に行くよう促した。
指し示された場所に入るといたのは痩せた男。
少し厚めの唇と丸い鼻に不釣り合いなぐらいのぎょろりとした目。
大柄ではないのに威圧感を感じるのはこの目のせいだろうか。
……見たくもない顔。
軽く咳払いをし、男が喋る。
「……常磐(ときわ)御前だな?
雪道、幼子を連れてご苦労だった」
意外なほどの優しい声音。
どんな厳しい詰問や罵声を浴びせられるかと覚悟していたのに。
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