章は作りません。

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6月の冷たい夜の雨は時を刻むように正確にこの街に降り注ぎ、確実に平穏な生活を蝕む。 雨空と雨空の合間の晴れ渡る空から差し込む陽光が一枚の黒い長い板ようになった地面を濡らしている。 このアスファルトで舗装された道は何処まで繋がっているのだろう? ジューンブライドだろうが自殺者が増えようが6月は私にとってはただの通過地点だ、4月の花粉と同じように早く過ぎ去ってしまえと思う。 新婚生活も2年目に突入すると新鮮な気持ちは無くなる、旦那と一緒に夕食を食べ、私はリビングで本を読んでいた。 一区切りついたところで私はキッチンへ缶ビールを取りにソファーから疲れ切った重い腰をあげた。 そしてそこでやっと明日の朝の食パンがない事を思い出した。 私は薄手のパーカーを羽織り、ビニール傘をさしサンダルを引っ掛けてコンビニに向かった。 私は滅多に夜中は出歩かないのだが今回は理由がある。 旦那は朝、絶対に食パンを食べる。 何種類ものジャムの中からその日の気分で選んだ一つを取り出してマーガリンを薄く塗りその上にどっさりとジャムをのせ美味しそうに頬張る。 そして週に一回、月曜日だけは決まって私が作るフレンチトーストを食べてから出社する。 「週の始まりは気合を入れなくちゃいかんからな」 などと男らしいのか… でもフレンチトーストって乙女チックじゃない? みたいな私には良く分からない…しかし旦那にとってはそれが一週間の始まりを鼓舞する一つの要素となっているのならそれを欠かすわけにはいかない… メイプルシロップとバターをのせたホカホカのフレンチトーストは旦那曰く 「ハイオクガソリン!」 なのだそうである。 旦那はいつも食パンを2枚を食べる。 それを知っていたのに私は昼に小腹がすいて食パンを一枚トーストして食べてしまった。 気がついたら明日の朝の分の食パンは1枚のみ… 完全に私のミスだ、旦那にはばれないように「多く作っちゃって、余らすのも嫌だからチョットお母さんの所に肉じゃがをお裾分けしてくるね」と適当な嘘をついてから家を出た。 旦那は近所に住む私の両親とは極力顔を合わせないようにしている、旦那は普段社交的で友人も親類も多いのだが 「お義父さんとお義母さんは盆と正月だけ会えたらそれでいいだろう?」 と、何故かこの件に関しては消極的になる。
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