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私は、昨夜の誠との電話を思い出していた。
「一緒に住もう。二人で暮らしたら絶対に楽しいよ。」
まだ学生の癖に、彼はこんな事を言い出した。
確かに、夜は美味しいタコスを出すBarでバーテンとしてバイトをしているが、家賃や生活費は親の仕送りだ。
一緒に暮らすにはお金がかかる。
東京に行っても、すぐに仕事が見つかるとも限らない。
もし東京へ引っ越すなら、100万くらいは貯めて行きたいと思っていた。
棚の、散らかった服を畳ながらボンヤリと考えていた。
「リカちゃん、1番行っておいで~。」
店長の声で我に帰った。
ちなみに1番とは、休憩の事。(2番はトイレ休憩。)
私のお昼はいつものカフェ。
ランチが安く、一人でゆっくり本を読んで時間いっぱい寛げるからだ。
カフェに向かって歩く途中、私はスーツの男に声を掛けられた。
いかにも水商売、といった出で立ちだ。
「ね、お姉さん、どこ行くの?いい仕事があるんだけど、話だけでも聞かない?」
軽い明るめの声で、男が寄り添って私の横についた。
いつもなら当然無視なんだけど、その日の私は違った。
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