7097人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁまぁやったな。あ、歯は当てん様に気をつけろよ。痛いから。
まぁ、店の女の子にコツ聞く事や。
特に上手いんはマリナやから。それじゃ、今日は頑張るんやぞ。」
放心状態の私を気にする風でもなく、
「最初はみんなそうや。頑張れよ。頑張った分、金になるからな。」
と言い残し部屋を出た。
始めにピンサロだと説明しなかったスーツの男に、憎しみが腹の底で煮えたぎっていた。
ガチャ。
ドアが開き、20代後半くらいの女性が入ってきた。
「今日は体験だって?宜しくね。私はマリナ。」
「あっ…、は、はい。」
「まずは名前考えようか。何がいい?」
場違いに明るく、年上らしい上品で優しい声でそう言われ、私の緊張の糸がようやく緩んだ。
名前…。
「私、本名がリカコなんで、リコで、いいです。」
「本名に近い名前だけど大丈夫?やじゃない?」
そう言われたら確かにそうだ。
「あ、じゃあ…、アイにします…。」
テーブルの上に置いてあった雑誌が目に入り、咄嗟にアイにした。
「愛なんて無い」のアイだ。
最初のコメントを投稿しよう!