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「っと、健一さん、ってのもあんまり良い呼び方じゃないなぁ。どうせなら健一君って呼んでよ!」
ニッ、と笑いながら言ってみる。
女の子は俺の顔をチラと見て、
「健一、君……」
恥ずかしそうに言った。
「カハッ!」
俺はその一撃に耐えられず、ハンドルに顔を突っ込む。
信号で車が止まってる状態じゃなかったら、事故ってたところだ、あぶない、あぶない。
そして、しばらくして信号が青になり、車をまた走らせ始めたところで俺は女の子に聞いた。
「キミの名前も教えてくれないかな? いつまでもキミってのも、なんかイヤだしね」
女の子は、え、と呟いて、急に慌て始めた。
「その、えっと……どうしても言わないと、ダメ?」
俺は頷く。
女の子は小さくか細い声で。
「……桜ノ宮」
その名前を聞いて、俺はすぐにピンときた。
桜ノ宮はたしか……ふむ、まぁ今はいいか。
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