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「じゃあ、下の名前は?」
桜ノ宮さんはまたしても小さな声で。
「…………め」
ん? 何だ? 聞き取れなかった。
「ごめん、もっかい言ってくれない?」
そしてまた。
「…………ひ…」
聞き取れない。
「ごめん、もっかい」
桜ノ宮さんは、その俺の言葉にすこし涙目になって、やがて観念したかのような顔になって、さっきより少し大きな声で言った。
「姫、です。私の名前は桜ノ宮姫」
姫、その名前を聞いて、俺は――
「……可愛い、名前だね」
素直に思った事を口にした。
桜ノ宮さんはその言葉を聞いて、キョトンとしている。
「どうしたの?」
俺は聞いた。
桜ノ宮さんは目をパチクリとさせて、
「いえ、その……笑わないの?」
と不思議そうに言う。
その言葉で逆にこっちが不思議な気持ちになった。
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