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姫は、笑いすぎて少し出てきた涙を、拭いながら言った。
「ち、違うの。その、まさかそんな事を言われるとは思わなかったから……。クサいな、って思ったら、健一君は決まった、って顔してるし……」
未だにクスクスと笑いながら言う姫に、俺は少し安心した。
初めて見たな、姫の笑うところ……。
つられて俺もアハハと笑う。
そこで初めて、姫が俺に話し掛けてきた。
「ねえ、健一君、私達は今どこに向かってるの?」
ん? そういや言ってなかったな。
俺は笑顔のまま姫に答えた。
「空港だよ」
空港? と姫は疑問を声にして表す。
続けて俺は言った。
「そう、友達が久しぶりに日本に帰ってくるんだ」
†
時刻は朝の十時三十五分。
俺は空港の駐車場に車を止め、アイツが姿を現すのを車の横に立ちながら待っていた。
「健一君、友達の乗った飛行機はいつ到着するの?」
俺と同じく、車の横に立ちながら姫が聞いてきた。
「えーと……十時三十分だから、もう来るはずなんだけどね」
携帯で確認しながら答えると、そうなんだ、と呟いて、姫は空港の入り口に目をやる。
俺はふと、姫の顔を見入った。
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