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「いえそんな! 私にはそんな趣味はありませんから! そしてテストの再試験なんて受ける気ありませんから!」
さりげなく自分の意見を織り交ぜる。
「ふざけるでないわー!! 普通なら0点のところを特別に受けさせてやると言っとるのだぞ!」
流石だ、趣味の部分を否定せずにテストの部分だけをツッこんできた。
プロ意識的なものを感じる……。
――って感心してる場合じゃない! 杉田先生が陸上選手並みの速度で迫ってきてやがる!
こうなったら……!
「ッハッハー! 俺と夕日の向こうまで走りますか! 先生!」
全身全霊を込めて、撒いてやる……!
「望むところじゃ! この阿呆がぁ!」
杉田先生もノッてきた。
フッ、実力の違いを見せつけてやるぜ!
そうして朝日に照らされる中、俺と先生の鬼ごっこが始まった。
†
「や、やばかった……! 予想以上に先生の足が速かった……!」
俺は大学の正門近くの茂みに身を潜めながら、息を整えつつ呟く。
まさか五十代の先生が五十メートル六秒台の俺について来れるとは、思いもしなかった。
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