第1部 精霊王への道

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2月に入り、学校も残り1ヶ月になっていた。400mのトラックがひけてもまだ余るぐらいの大きな運動場に一人の少年がいた。少年の名前は光王 サトシ。服装は普通の男の子の格好だった。サトシはいつも一人だった。遊ぶ時も帰る時も学校にいるときもいつでも一人。ただ、一人ではないのは家にいるときだけだった。家 にいるとき以外はいつも一人。友達もいない。親戚もいない。新しい友達も作れないまま学校生活を送っていた。サトシは小学5年生の時、死にたいと思うほどひどいいじめを受けていた。一年経ってもそのいじめは直らなかった。ある日のこと。自殺しようと考え、サトシは家庭科室に忍び込み、包丁を手に取った。家庭科室には 誰もいない。ここなら静かに死ねる。そう思い、包丁を自分の喉に突きつける。…だが、できなかった。死ぬのが怖いからではない。家族が悲しむからだ。家族以外の人達は悲しまない。家族が死んだら自殺しよう。ずっとそう考えていた。そんなある日のことだった…。家族が仕事から戻らないのであった。母も父も姉も兄も…。 行方不明になってしまったのだ。そして…。家でも一人になってしまった。そんなサトシの心は更に傷つきボロボロだった。
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