第4章 暴走

5/8
前へ
/347ページ
次へ
(や…めろ…) 頭の中でサトシが呼びかけ、ギリギリのところで攻撃を止める。 (どうして僕の邪魔をする?) (然達は初めて俺の仲間になってくれた人だ!そう簡単に傷つけさせてたまるか!) 自分の頭の中でもう一人の自分に向かって必死に叫ぶ。 (また…、裏切られるかもしれないのに?) 悲しそうにしゃべるもう一人の自分の言葉を聞くと何?とサトシが聞き返す。 (またあの時のように裏切られるかもしれない…) (黙れ!然達は…裏切らないって言ってくれた。俺は…然の言うとおり、この世界の人々は現世の人とは違うような気がするんだ。俺は然達を信じたい。いや、信じるって決めたんだ) サトシは静かにもう一人の自分に言うと、もう一人の自分が怒るようにサトシに言い返す。 (だったら何故裏切られた?何故信じていた友達がお前を裏切った?僕はそれが許せない。そうだろ?僕はお前が望むから生まれてきたんだ。僕を否定するな!僕も生まれてきたくて生まれてきたんじゃないんだ!お前が…お前が……を殺したいと言う……を……するから…) 途中、途切れ途切れで聞こえなくなってしまったが、今はとりあえずもう一人の自分が何故生まれてきたのか?何が目的なのか?サトシはそれを調べることにしたが、今は…授業中だった。 (俺の中で然達を見てから決めてくれ。もし然達が裏切ったりしたら…お前に任せる。だから…今は鎮まれ…) 静かに自分にそう呼びかけると、だんだん落ち着いてきたのか意識が元に戻っていくのがわかる。が、それまでに何があったのかは全く覚えておらず、覚えていたのは然達に攻撃しようとしたところだけだった。サトシは息を切らしながら剣を鞘におさめると然達に何があったのかを聞く。 「ええ!?何があったか…覚えてない?」 驚く声を隠せないクリスがつい大きな声で言ってしまう。 「あ、ああ…。何があったか全く…。」 そんなことを言いながら、サトシはもう一人の自分について考えていた。 (俺がいじめられていることを知っている…。ってことはあいつは俺がいじめられている時に生まれた…まさか、本気で喧嘩した時に意識がなくなるのって…) そんなことを考えていると、サトシの暴走のことはさておき、静かになった洞窟の中で、急に然が叫びだした。 「そうだ!今授業中だった!早くココから抜けないと失格になっちまう!」
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加