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「じゃあ、ライのこの傷は…!」
「こいつは俺からしたらただのかすり傷だ。」
この問いには父ではなくライが答える。そして今までとは違いクロードの父に対して憎しみの笑みを浮かべる。その笑みを見ながらクロードの父が言う。
「私は部下にスパイを送ったと聞いた。私は死に物狂いで誰がスパイかを調べた…。このままでは反乱軍も軍も壊滅させられる恐れがあったからだ。」
ライを見る目が普通の目から睨みつける目に変わっていく。それを聞いたクロードは悲しそうな表情をしながら父に言う。
「じゃあ…どうして父さんは反乱軍に来てくれなかったのさ!」
泣きそうな声をだしながらも叫ぶように言うと父はライからクロードに視線を移し、静かに言う。
「私は、クロードの軍へ行きたかった…。クロードと共に戦いたかった…。だが、私は反乱軍に送り込まれたスパイを探さなければならなかった。私達のため…そして、クロードのため…。だが、今やっとそのスパイの正体がわかった。」
まさかお前だったとはなと今度はクロードからライに視線を移し、冷たい視線でライを見ながら言う。
「そうだ。俺はスパイだぜ。俺はあの方に命令されて反乱軍に来たんだ。…でも、クロード、お前と過した2年間、楽しかったぜ。」
さよならだ…と冷たくクロードに言い放ち、ライが短剣をクロードに構え、攻撃しようとする。
(どうしたら良いんだ!ライは…ライは敵…でも、でも…あいつは俺達と2年間一緒に戦った戦友じゃないか!ライを…ライを殺せって言うのか!)
クロードの中にたくさんの思いが入り混じる。思わず、頭を抱え、どうすればいいんだ!と頭の中で叫ぶ。そんなクロードを見た父がクロードに向かって叫ぶ。
「何をしている!クロード!早く殺せ!お前が殺されてしまうぞ!」
父のが叫ぶが、クロードには聞こえていない様子でまだ何か思い詰めており、ライの動きも見えないくらいだった。
「どうしたクロード!お前の力はそんなものか?死ね!」
そう言い、短剣をクロードの腹部に刺そうとする。が、全く避けようとしないクロードを見た父は、クロードの前に立ち、代わりに自分がライの攻撃を受ける。
「ぐふぅ。」
腹部を押さえながらしゃがみ込む父の姿が目に入れば、クロードは思い詰めるのをやめ、慌てて父に駆け寄る。
「父さん!」
苦しそうにしゃがみ込む父の姿が見える…その先には…苦しそうにしゃがみ込む母もいた。
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