第7章 交錯する思い

6/9
前へ
/347ページ
次へ
「良くやった…それでこそ…我が息子だ…。」 父と母にはもうほとんど力が無く、残っているのはしゃべるのでやっとくらいの力だった。 「父さん…母さん…ゴメン…俺が…俺があの時迷わずライを殺していたら…。」 泣きながら言うクロードを見た父はクロードの頭を撫でながら言う。 「殺すなどという事は…簡単に決めれることじゃない…余程の勇気がいるものだ…。お前は私達に剣を刺された時…迷わずライを刺した…。それも…勇気の一つではないのか?」 「…俺が…母さんと父さんを殺したんだ…。」 クロードの言葉に、父と母は驚く。俺が殺した…そう述べた後、しばらくしてからたくさんの雨が降ってくる 「違う…。お前が殺したのではない…。」 「俺が…俺が殺したんだ!あの時…迷っていなかったら…父さんと母さんは死ななかったんだ!死なずに済んだんだ!」 そう叫んだ後、俯き、泣きながら、言う。 「どうして…、どうしてこんなことにならなくちゃいけないんだ!」 くそッと地面を思いっきり殴るクロードを見た父はそう思い詰めるなとクロードに言うと、クロードを自分の方に引き寄せる。 「私の“夢”を…お前は知っているか?」 何を今更と言うような顔をしながら父を見るが、わからなくて当然だ。素直にわからないと答えると父は優しく微笑んでからクロードに言う。 「私は…、一度でいいから本気のお前と…戦いたかった…。それが私の…小さな夢だった…。」 そこまで言うと、父の目に涙が浮かび、父の顔を流れる。 「だが…その夢も…叶わぬまま…尽きてしまうのだな…。」 空を見、泣きながら言う父を見るが、何も言えない自分がいる。そんな自分にクロードは腹を立てていた。小さいころから伝えたいことがあった。それは…戦場で生まれ育ったが、自分をここまで強くしてくれたこと、そして、誰よりも自分を思ってくれていたこと…最後まで心配かけてゴメン…そう伝えたかったが言葉にならず、 ただ泣いているだけだった。泣いているクロードを見た母が、父と同じく、優しく微笑みながらクロードに言う。 「クロード…、私達が死んだからと言って…後を追うようなことは…絶対にしないでください…。この後を生きられなかった…私達の分まで…生き延びてください…そして…彼女を…必ず…。」 母の言葉はそこで途切れ、息を引き取った。 「母さん…?母さん!」
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加