第2章 妖霊界

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メドリから地図を受け取るとその地図を大理石の床に広げ、膝をつき地図を見渡すと不思議なことがわかった。 「これは…!」 ビックリするもの仕方がない。何と言ったってこの世界には“海がない”のだから。海がなくずっと陸地が続いている。かろうじて湖はあるが海と呼べるほどの広さではない。それに、妖霊界は2つの世界といくつかの町によって作られている。妖霊界ともう一つの世界の名は…精霊界。精霊王が暮らしたりする世界である。その世界はかなり広く、地図では表せないほどの広さであった。 それを不思議そうに見ているサトシにメドリが声をかける。 「あの、サトシさんはどうしてこの世界に来たんですか?」 「え?」 いきなり下の名前で呼ばれた驚きとこの世界に来た理由。はっきりと覚えているものではなかったが説明する気は全くなく、心を開こうとする様子はない。この世界の人々はみんな人を下の名前で呼ぶ。上の名前で呼ばれる人は殆ど少ない。だからメドリはサトシのことを下の名前で呼ぶ。だが、それを知らないサトシはメドリを上 の名前で呼んでしまう…。 「あの…、大天さん…?」 「あ、そうか、知らないんだね。サトシさんわ…。」 「何を…ですか?」 「この世界ではね、人を下の名前で呼ぶのが普通なんだ。だから自己紹介されたら下の名前で呼んでね。それに、上の名前で呼んでもらいたい人とかもいるからその時は相手に合わせて!」 サトシさんはサトシさんって呼ばれるの嫌?と悲しそうな顔でサトシに近づくメドリを見れば、断る理由はない。 「いや…、別に構わないよ。」 無理やりだが笑顔を作ると、ミヅキとメドリがすごく喜び、ミヅキがサトシに言う。 「この世界に来て初めて笑ってくださいましたね!うれしゅうございます。」 ミヅキは年下にでも年上にでも何故だか敬語を使う癖があるため、いつもお嬢様呼ばわりされるが実際お嬢様ではない。 「……笑うのは嫌いだ。」 サトシのいきなりの言葉に二人はビックリしつつもそのことはおいといてと言わんばかりにミヅキが自己紹介する。 「そういえば、自己紹介がまだでしたね。サトシ様。私の名は“神無月 美月”(かんなづき みづき)と申します。この世界ではなにかと苦労するでしょう。なので私が今日からあなたの母親になります。少し、やりにくいかもしれませんが、どうか、私のことをお母さんと呼んでいただければうれしいです。」
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